新卒の初任給は10年でいくら上がった?推移データと「上がっても辞める」の現実
「初任給30万円」
最近、この数字をニュースで見かけることが増えました。ユニクロ37万円、SEGA33万円、メガバンク30万円——大手企業が相次いで初任給を引き上げています。
一方で、Xではこんな投稿がバズっていました。
「初任給を月3万円上げたら、2年目が7人辞めた」
初任給が上がること自体はいいニュースのはず。でも、上がったからといって辞める人が減るわけではない。むしろ新たな問題が生まれている——その実態を、データで整理してみます。
大卒初任給の推移:10年で約2.5万円上昇
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から、過去10年の初任給推移を確認します。
| 年度 | 大卒初任給 | 高卒初任給 |
|---|---|---|
| 2014年 | 約20.0万円 | 約15.8万円 |
| 2018年 | 約20.7万円 | 約16.5万円 |
| 2020年 | 約22.0万円 | 約17.5万円 |
| 2022年 | 約22.8万円 | 約18.1万円 |
| 2024年 | 22万5,457円 | 18万8,168円 |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、産労総合研究所「決定初任給調査」各年度
10年間で大卒は約2.5万円、高卒は約3万円の上昇。特に2024年度の増加率は3%超で、これは1992年以来32年ぶりの水準です。
長年「20万円前後で横ばい」だった初任給が、ここ数年で明確に動き始めています。
2026年、初任給30万円の時代へ
2026年4月入社の新卒に対し、帝国データバンクの調査では67.5%の企業が初任給を引き上げると回答。平均引き上げ額は9,462円です。
出典:帝国データバンク「初任給に関する企業の動向アンケート」(2026年2月、1,541社回答)
中でも注目は、「30万円超え」の企業が続出していること。
| 企業名 | 大卒初任給(2026年) | 前年比 |
|---|---|---|
| ファーストリテイリング(ユニクロ) | 37万円 | +4万円 |
| 第一生命HD | 35.4万円 | — |
| SEGA | 33万円 | +3万円 |
| アシックス | 33万円 | — |
| 三井住友銀行 | 30万円 | 業界初 |
| 三菱UFJ銀行 | 30万円 | 業界初 |
「初任給30万」はもはや一部のIT企業だけの話ではなく、メガバンクや小売・製造まで広がっています。
なぜこれほど引き上げが進むのか
企業が初任給を上げる理由の73.5%は「人材を確保するため」です。
少子化で新卒の母集団が縮小する中、他社に負けない条件を出さないと採用すらできない。初任給は「入社後の待遇」ではなく「採用の広告費」としての性格が強くなっています。
でも、上がっても辞める
ここまでのデータだけ見れば「若い世代は恵まれている」と感じるかもしれません。
しかし、新卒3年以内の離職率データを見ると、大卒の3年以内離職率は33.8%。初任給が上がっても、3人に1人は辞めています。
「お金だけでは辞めない理由にならない」ということを、データは示しています。
「初任給を上げたら2年目が辞めた」問題
初任給の引き上げが引き起こしている深刻な副作用が「賃金逆転現象」です。
新卒の初任給を上げた結果、入社2〜5年目の先輩社員と給料がほぼ変わらない、あるいは逆転するケースが発生しています。
| 状況 | 影響 |
|---|---|
| 新卒25万円 → 2年目24万円 | 先輩より新人の方が高い |
| 新卒の方が手取りが多い | 2年目以降のモチベーション崩壊 |
| 既存社員の給与テーブル未改定 | 「自分はなんのために頑張ってきたのか」 |
Xで数万いいねを集めた人事の投稿も、まさにこの問題でした。初任給を3万円上げた結果、翌年に2年目が7人退職。最終的に2年目の給与も見直したところ、翌年は退職ゼロになったという話です。
つまり、初任給だけ上げても意味がない。給与テーブル全体を見直さなければ、「採用できても定着しない」という結果になるということです。
企業規模による格差も広がっている
初任給の上昇は全体的な傾向ですが、恩恵は均等ではありません。
| 企業規模 | 大卒初任給(2024年度) | 引き上げ実施率(2026年度) |
|---|---|---|
| 大企業(1,000人以上) | 24万1,082円 | 65.6% |
| 中規模(300〜999人) | 約22〜23万円 | — |
| 小規模(299人以下) | 21万8,118円 | 50.0% |
出典:産労総合研究所「決定初任給調査」2024年度
大企業と中小企業の差は約2.3万円。さらに、引き上げを実施できている中小企業は半数にとどまります。
「大企業の初任給高騰はダメージが大きい」という中小企業の声は、採用競争で負けているという切実な現実を表しています。
初任給が高い=いい会社?
初任給だけで会社の良し悪しは判断できません。注意したいポイントがあります。
固定残業代が含まれていないか。初任給「30万円」の内訳を見ると、基本給20万円+固定残業代10万円というケースがあります。見かけの数字だけで判断すると、入社後に「思っていた条件と違う」となりかねません。
額面と手取りは違う。初任給30万円でも、社会保険料と所得税を引いた手取りは24〜25万円程度。「30万円もらえる」と思って入社すると、最初の給与明細でショックを受けることがあります。
昇給ペースの方が大事。初任給が高くても、2年目以降の昇給が年数千円なら、5年後には他社に追い抜かれます。初任給だけでなく「3年後・5年後にいくらになるのか」を確認した方がいいです。
まとめ:数字の裏にある構造
ここまでのデータを整理すると、こういう構図が見えてきます。
- 初任給は10年で約2.5万円上昇、30万円超の企業が続出
- でも新卒3年以内の離職率は33.8%で改善していない
- 初任給だけ上げると賃金逆転で既存社員が辞める
- 大企業と中小企業の格差はさらに広がっている
初任給が上がること自体は歓迎すべき変化です。ただ、「初任給が高い=恵まれている」と単純には言えない。その裏には、賃金逆転・固定残業代・企業規模格差という複雑な現実があります。
新卒の離職率データについては新卒3年以内の離職率は何%?で学歴別・業種別に整理しています。「初任給は上がったのに辞める人も多い」という実態を、あわせて確認してみてくださいね。
転職を検討している方は転職エージェントおすすめ4選も参考にしてみてください。
初任給のデータはどこで確認できる?
厚生労働省が毎年「賃金構造基本統計調査」として公表しています。学歴別・企業規模別の数値が確認でき、厚生労働省のウェブサイトから閲覧できます。
初任給の「額面」と「手取り」はどのくらい違う?
一般的に、社会保険料(約15%)と所得税を差し引くと、手取りは額面の約80%前後になります。初任給25万円なら手取り約20万円、30万円なら約24〜25万円が目安です。
この記事で引用したデータの出典:
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年度
- 産労総合研究所「決定初任給調査」2024年度
- 帝国データバンク「初任給に関する企業の動向アンケート」2026年2月
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
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